割ってしまうくらいなら、大切にしたいものは使わない。だから手元に残るのは大抵要らない物ばかりだった。
いつの間にか皹が入っていたり、欠けていたり、失くしてしまったりを繰り返す内に、いつしか失望が先に立つようになってしまって。
時折、本当に要らない物が何だったかさえ見失う事が増えた。
そう、男は呟いていた。
『アンタの要らないモノって何』
訊ね返した日の夜。
跳ね回る街灯の光を足元に、男が言うのだ。
『何か代わりになるもの探しておいてくれよ』
何て空寒い、中身の無い告白だったろう。詐欺師だ、道化師だ。
『とか言って、どうせそれも壊す癖にな』
どっちの台詞だったのか、曖昧なのは何故だろう。
手から滑り落ちたフリをして砕いてしまえれば良かったのにな。