サアカス。或いは異界

サアカス。或いは異界チャリネ

 私はサアカスをどうも好きになれた試しが無い。
 ロオプを渡る娘にしても、火の輪をくぐる猛獣にしても、張り詰めた緊張で雁字搦めに絡め取られて感嘆する暇などない。
 舞台に立つまで掛かり得る時間……惨めたらしい端役達の末路……作り笑いを施した道化の堂々とした佇まい……動物の、食事にあり付く為に捨て去られた獣性……。

 数多に及ぶ驚嘆が一堂に会し、飽和し、反響し、破滅せしめる大舞台。その傲慢さと来たら、全くもって異界めいている。
 一等恐ろしさを覚えることは観客が皆年端も行かぬ子供らによって埋め尽くされている事実だ。娯楽遊行に感嘆し、地獄絵の生写しに狂喜乱舞する様、それこそが私に襲いかかった。
 私は最早サアカスを見てはいない。
 サアカスという異界が呆然と立ち竦む私を見世物にしていた。