鍵をした方がいい。アドバイスを貰った。
毎晩執拗に叩かれる。鍵のない扉は容易に開け放たれてしまってあまり意味がない。この続きはよく見るありきたりな展開だが、その悩みに対して得たのがこんな解法だった。
初めの内はそうかと納得して一つ掛け金を買って取り付けてみた。大振りの錠前は目立つ。なので一先ず小振なラッチ錠にした。ところがその日から鍵を開け閉めするのが途轍もなく煩わしく我慢ならなくなった。開けても駄目、閉じても駄目なら一体全体どうしたら良いですか。間の抜けたお悩み相談にそいつは言った。
「部屋そのものを広げたらいいんじゃない?」
思わず首を傾げた。そのものと言ったって部屋割りを決めたのはそもそも自分ではないし、かと言って本日ただいまをもって引越しますという身の振り方は許されていない。
所詮他人の適当な助言だった。寒空に突っ立っているとふと思う。
壁のない空の下。壁。ああ、部屋を区切っているのは壁なのだ。壁を無くせば良いのか。毎晩迫ってくるあれを。妙案を閃いた気がしてホームセンターに急いだ。
まずは必要な道具を揃えなきゃな。