見窄らしい格好のまま溝川を浚う。道ゆく人々が皆一様に鼻を摘み過ぎて行く。もっと上手い方法があるとか、業者に金を積めばいいとか、一人過ぎる度に声がする。とうの本人の鼻は既に使い物にならない。止せばいいのに素手で汚物を掻き回していると、見るに見かねた誰かが水を撒いていった。『これで少しはマシになったでしょう』。
重くなった服の替えもなく、倍の力で汚物と水の混ざりものらしき泥の底を浚う。耐えかねた誰かがすれ違い様嗤った。『やめたらいいのに』。
腕に巻き付いた〈清掃係〉の腕章は直に肌に縫い付けてあってどうしようもない。いつからあったのか、どうしたら外れるのかは分からない。
腕ごと捥いだらいいのか。立ち止まって全て投げ出せばいいのか。濁った泥の底に何があるのか。
分かっているのは、棒のような二本の足とぶら下がる二本の腕の他はどんな美しいもの、醜いもの、動くもの動かぬものも泥の中には見えていないということだけだった。
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2022.2