放課後

 目の端に付かない方法を探している。窓際最前列の席から臨める、中庭で並ぶ影が伸びていくのを。

 ホームルームを終えた教室にたった一人残っている理由を聞かれない事を祈りながら、赤錆びたベンチに座る二人は何を話しているのか大体の想像が付いてしまうし、そんなことで働く想像力に寒気を覚える自分にすら呆れている。
 いつになればあの二人を見ずに済むだろうか。胡乱な目で見た時計は既に閉門時刻を指し示そうとしている。こんな時間まで、俺もあの二人も学校になんて残って。
 どうかしている。

 どうか。

 「榛葉!」

 ガタつく窓を無理矢理こじ開けて喉が裂けんばかりの声を上げた。実際には何とか届く程度。だけどいい、届いたならそれでいい。
 

 「何、奇遇じゃん。何してんの」

 たった今届いた声に、榛葉は振り仰ぎ奇妙な笑顔を向けた。驚きと——後はただの願望になっていそうだから表さないでおく。

 「補修!なぁ、帰り一緒していい?」

 誤魔化せている気が微塵もしないあからさまな誘いを確かめもせず、榛葉は即答した。手を軽く振る様は、拒絶ではない意思表示。

 「早く来い。待ってるから」

 待ってる。
 その一言に霞んでいた頭の霧が瞬く間に晴れていく。
 隣に並ぶ不機嫌な表情を見なかった事にして。
 

 ざまぁみろ。どうせ俺のいない所では好きなだけ拝んでいるのだから、このくらい良いじゃないか。勝手な自己弁護を喚き散らしながら鞄を引っ掴んで教室を飛び出した。