「俺のこと好きなの」
「どっちかっつーと嫌いだけど」
墓場まで持って行ける自信はない。
当然、曝け出し過ぎるお前と比べてくれるな。
「……よく抱けるな」
人で無し。心底呆れた後 自虐する口元。
こんな時間まで付き合ってやってんのにその口振りはない。そんな話を平気な面下げて、眇めた目が夜の帳に向く。
「女には困ってないのに」
「お前さ」
躊躇いがちに言い淀んだ言葉が失速していった。
分からせようとは思ってないから、別段それは構うことじゃないけれど最終的に出たのは吐き棄てた様な一言。
「シツコイ」
僅かに振れた頭が項垂れる。項垂れて、弱々しいそれがする。
「……そう言われてもさ、別に何ともないのに、なぁ」
呟いた 「しんど」と入れ替わりに吐き出された嘆息に紫煙が溶ける。煙を目で追い掛けてしまえば顔は見えない。紛れてしまうから染め過ぎて傷んだ頭を掻き混ぜた。
「代わりに使っておいてよく言う」
敢えて禁句を踏み抜いて行く。今日は駄目だ。最低。不味くなる一方のハイライトを灰皿に押し付けて笑う。逃げられる前から 追い掛けることしか頭にないんだ。そんなんじゃ捕まるもんも捕まえられないのに?
「るさい」「そうかよ」
散らかされた衣服を拾い集めて年寄り染みた口調が変わって、不貞腐れる狡い奴を横目に 部屋を出て行く。
「……今更、面倒くさくなんなよなぁ」
最後の呟きだけはしっかり聞き逃した振りをして。
こっちの台詞なんだよ。
閉め切った扉の向こうじゃ、今更後悔してんだろうな。あいつにはそれで良いんだ。俺は慈悲深くないし、懺悔も聞かない。横着してんなよ。優しくも甘くもしてやれないんだから。慰めて叱ってなんかやらない。手放せないくらいの温い関係なら 墓場まで誰にも知られなくていい。お前は知らなくて構わないよ。でも気付いて知ったなら、そん時が最期だ。そん時は言うよ。耳塞いでても 無理矢理捻じ込んでやるから逃げ切れると思うなよ。