もしも君になれたなら

 はっと目を開いた。
 傍らにある口が流暢に蠢く。手にはペンと、さっきまで必死に探し回っていたのが嘘みたいな顔のノートが一冊。

 「————って話はどうかな?」
 
 

 「なぁ佑太」

 「んー?」

 へらっとしてこっちを向くけれど、表情と声音が一致していない不可思議な顔をされては何も言えない。

 お前はいつになったらその物語を現実に出来るんだろうな。「架空の話」からこいつは逃げ出せないのだ。目覚める機を逸した登場人物が筆を走らせる紙は白紙のまま一向に進まない。
 腫れ赤らんだ痣を撫でながら佑太は続ける。何処も見ていない目が告げる。あー、腹減った。最後に出たのはいつだっけ。

 「でももし俺が藤間と替わったら……」