◆朝焼けには遠い色
探していた。辿り切れない日々に埋もれて、まさかそんなものが残してあるなんて思いもよらないだろう。趣味じゃない色の灰皿は捨てておいたし、いつ置かれたか定かじゃないロゴの擦り切れたスニーカーも、いつしてたのか思い出せもしない眼鏡も一緒に纏めてゴミ袋に放り込んだと安心していたのが不味かった。
昨晩見たディレクターズカット版の名作に思いを馳せつつ船を漕いでいた丁度その時、鳴り響く電子音に跳ね起きた。
うたた寝日和の午後のこと。突如として妨げられた不完全燃焼の眠気に機嫌を損ねつつ犯人探しに躍起になっていると、寝室のドア裏に転がっているのを漸く発見した。
そうか。あいつ、スマホのアラームを嫌ってた。楽な方に流れる俺と違って枕元に必ず一つ置いていたっけ。何十年も昔に埋めた古い玩具を発掘した気分、と美化は出来ない。叩き壊しそうな勢いで時計に手刀を決め、一息付いた。
しかし何故こんな時刻にセットされているのか——。
「あ」
ベタベタと人の生活に手垢だけ付けて、結局まだ居なくなってくれないらしい。その場に項垂れて呻く。
「あーあー、もう……」
冴えない日常の中、一つだけ残った置き土産は取って置いてやるしかないのかも知れない。
午後三時半過ぎ。朝焼けには遠い色した窓辺にぼやく。
俺が観てたドラマの再放送なんか覚えてんじゃねーよ、ばーか。