朝焼けには遠い色

◇常夜燈

 何にも置かないつまらない部屋は嫌だからと言って部屋の鍵を渡された時は正直驚いた。
 気を許されていると見事に勘違いしてしまったから。
 硬いマットレスへ仰向けに転がって、何度も寝返りを打ってみても目は冴え過ぎるほど冴えている。

 誰の手垢も付かない真っ新な部屋は確かにつまらない。人が住んでいても無彩色な箱という認識から出ていかない空間は、整理整頓の苦手な性格が生み出した合わせ鏡だった。
 必要最低限以上を分不相応に持つから片付けられなくなる。要らないものは無い。足りないものは無い。完璧ではないけど、これ以上は持てないから何も欲さない。

 立てた誓いを最後に壊した彼は前の冬から会っていない。
 頑なな背中は引き留めておくには余りに脆く見えた。
 砂に溶けた時間に目をやれば、子守歌そのもの、みたいな奴だったなと思いもした。或いは常夜燈みたいな。目を閉じている間中も消えないで、本当にそこに居た。

 外はもう白み始めている。結局寝付けないままだった。時計を……
 あれ? 
 ない。枕元に置いていた小さな目覚まし時計の姿が何処にも見当たらない。

 もしかして、ああ、やっぱりそうだ。間違いない。

見付かって欲しくないような、見付けて欲しいような曖昧さに耽って。
通りの灯りはもう全て消えていた。この部屋はまだ暗いままでいる。けれどまだひっそりと灯ったままの常夜燈を想って、カーテンを開けた。